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それはまるで魂を揺さぶる呪文。

一生解けない呪いの始まり。




Spell Bound




鎌倉の軍は逆鱗の陽の気の前にただ紙くず同然、まるで真っ白な絹織物の上に溜まった埃のように焼き払われた。

虚を突かれた彼らは断末魔を上げるどころか逃げることさえ許されず、地にひれ伏す間もなく命を焼き焦がす。

その匂いが、鼻から喉にかけてこびりついて離れない。

望美は、大社を降りてからずっと、無言だった。


――これで、いいわ


これからしばらく、鎌倉は乱れた統制を整え、まだ攻撃してくるつもりならば援軍を待たねばならないだろう。

それも時間との勝負となるが、いかに湿地に強い鎌倉勢とてこの奥州の雪深さには舌を巻くはずだ。

長期戦ははなから覚悟の上。

背負う罪も受ける罰も、わかりきっていれば恐ろしいことなどあるものか。

冬の夜は急いている。

望美が大社を出たときに傾いていた太陽の光は知らぬうちにその効力を失い、伽羅御所の対で額に浮かんだ汗を拭ったときにはもう、 宵闇が背中にぴたりと寄り添っていた。

対の中に設えられた燭の炎が小さく揺れ、望美の顔が自嘲の笑みに歪んでいく影を作り出す。


――なぜ


あのような非情な行為に駆り立てた理由が自分でも分からない。

仲間を守る、九郎の命を守る、行くあてのない自分たちを受け入れてくれたこの地を守る。


――なぜ


どの理由も尤もなようでいてどれもそぐわない。

魂に肉薄とし、激情の裏に潜んでいる「理由」があるはずなのに、分からなかった。

ただ、終わったことに対しての後悔だけはしていない。

それが怜悧といえばそうなのだろうし、無慈悲と冷酷だと罵られても構わない。

望美は薄ら寒い空気から身をまもるように蹲って座り込んだ。

本当は体の芯から隅々まで、余すことなく疲れきっているはずなのに、 頭だけはいやに覚醒して眠気など訪れる気配がなかった。


「――そうしていると、まるで黒き刻の女神のようだな、神子殿?」

「やす、ひらさ」

「死者の上で躍り狂わないだけまだましか」

「どういう意味です?」


頼りない燭の光の中で、泰衡を睨みつける望美の翠玉はそこが光源になっているかのように見えた。

泰衡は、休むにふさわしく至って軽装な肩で視線をやり過ごし、少々乱暴とも言える足取りで望美に近付き――


「随分と気丈でいらっしゃることだな」


腕をぞんざいな力で締め付けて瞳を覗き込んできた。

そのまま、押し倒される。


「なっ・・・・・・何を!」

「貴方は分かっているのかどうか知らんが――これから先、この様に無防備では取って食われる」

「どいて下さい!」

「嫌だ、と言ったら?俺を切り伏せるか?」


間近で見る泰衡の瞳は本当に綺麗な漆黒のつややかな玉だった。

ほんの僅か乱れた首元の白と、綺麗に纏めた髪の対比が痛いくらいに視界一杯に広がる。


「どうした?大社での残酷さは一時のものか?」

「離して・・・・・・どいて下さい!」


どんなに望美が足掻こうと、体の総てを使って抵抗しようと、体格の差は歴然であり力の差もそれに比例する。

泰衡にとって、望美の両腕を頭の上に拘束することなどわけなかった。

容易い――暴れ馬の手綱を握るほうがずっと難しいくらいなのに、光源と化した瞳だけは一瞬も揺らぎを見せない。

その光が、己の目を介して後頭部に突き刺さる。


「分からないな」

「・・・・・・?」


望美の体の自由を完全に奪った泰衡は、眉間に皺を寄せて言葉を紡ぐ。

体を抑えられた望美は抜け出すことしか考えていなかったが、彼にはまだ疑問を抱く余地がある。

それは、この場の優劣を如実に現し、支配者はどちらか決定している証拠にほかならない。


「大社で悪神になったかと思いきや、そこいらの町娘と変わらん無防備さを見せる。
 確かに戦慣れした身のこなしだが――これが、神子か」

「何が言いたいんですか」


望美の質問に答えるほど、泰衡は優しい心の持ち主ではない。

代わりの返答は圧倒的な威圧を持って宣言された。


「――暴けば、分かるか」


言葉が、望美の脳の中で噛み砕かれ、理解する前に上半身を覆っていた衣を引き剥がされる。

声も出なかった。

引きつった喉は生来の役割を放棄し、ただ、体が強張り、誰にも触れられたことのない乳房に泰衡の手の感触が伝わってきた。

そこで、ようやく、これから、何を、されるのか、わかった。


「・・・・・・や」


泰衡は構わず手の中で形を変える乳房を鷲つかみにし、容赦のない力でその頂点をつまんですりあげる。


「・・・・・・いや」


望美の瞳は大きく見開いているのに何故だかどこも見ていない。

ただ、視界に広がる天井がどうして助けてくれないのだろうかと、 理不尽な怒りと飲み込まれそうな恐怖に本能が乗っ取られる。


「・・・・・・いやぁぁ!」


それでも、生まれ持った性には逆らえなかった。

泰衡の手が的確に乳房を玩べば、知りえなかった感覚が甘い嫌悪を伴って下腹部からせりあがる。

機能を取り戻した声帯が、どれだけの感情をこめて叫ぼうと泰衡の耳には届かない。


――こんなのは


左腕で望美の両腕を、右手で彼女の乳房を、そして舌で首筋を覆う泰衡にはこんな状況だというのに 甘い芳香を滲ませる白い肌が酷く不思議だった。

どこの女にもこんな仕打ちをしたことはない。

むしろこの肩書きと財産を欲して送り込まれた女たちは自ら股を開き、自分に跨った。

突っ込んで引いて揺さぶって吐き出す一連の行為に快楽は伴うものの、こんな風に、 こんなに首筋の裏が総毛立つような興奮を味わったことはない。

どんなに抵抗されようが止めるつもりはなかったし、止まらなかった。


――こんなのは・・・・・・嫌だ


時折ちりとした痛みが肌の上をすべり、蹂躙の印が付けられたことが分かった。

舌を這う後を追うようにかすかな冷気が肌を震わせ、息を吐き出すたびに白くけぶる。

纏められた腕は痛みを通り越してもう感覚がない。

しかし、泰衡から与えられる痛みと感覚には不思議と拒否反応が起きないのも事実。

どうして、と頭の隅で思ったとき、無慈悲な泰衡の手が中心に伸びる。


――・・・・・・・っ!


「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやあぁぁ!」


有らん限りの力が、置き去りにされた全身から迸る。

耳をつんざき、鼓膜を破り切る悲鳴は泰衡に中断させるだけの効果があった。


「こんなのは・・・・・・こんなのはいやぁ・・・・・・」


望美の体の上に馬乗りになったまま、泰衡は両腕の拘束を解く。

透明な雫が頬を滑り落ちる回数を数えながら、ようやく停止いていた頭が回りだす。

肌が白を通り越して青さを帯び、細い首筋に浮かんだうっ血の跡と弄られた証拠の、己の唾液が乳房の頂点を汚していた。

そうして、初めて望美の悲鳴が体を急降下し大事なところに命中する。

しばし、互いの時が止まった。








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