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縁側にて



緋色の髪に同じ色の瞳。

綺麗に整った顔はまるで熊野別当の称号と似合わない。

次から次へと口からこぼれる言葉は、あたしをいつも翻弄する。

あぁ、くやしい。

あたしもヒノエ君を翻弄したいのに。

京の景時さんのお屋敷にお世話になっているあたしは、縁側でぼんやりとそんなことを考えていた。


「どうしんただい、姫君?花の顔が憂いに沈んでしまっているよ?」

「……ちょ、わ、ヒノエ君!」

「そんなに驚くことはないんじゃない?」


少しだけ心外だ、と頬ににじませてヒノエ君はあたしの横に腰を下ろす。

考えていた本人がいきなり目の前に現れたんだから驚くのは……当然のこと。

しかも、一連のしぐさの自然なこと。

他の女の子にも、こうして近づいて話かかけるのだろう。

一気に頬に熱が上がる。

それはヒノエ君にも伝わってしまったようで。


「あれ?今度は赤くなったね。どうしたの?」


と、どんどん顔が近づいてくる。

ああぁ、もう、これが限界。

睫毛の長さがわかるくらい近い位置で見つめられて、恥ずかしいを通り越して泣けてきた。

なんでだろう?

どうしてだろう?

心臓が体を突き破って飛び出しそうなくらい、内側から脈を打つ。


「ヒ……ヒノエ君!」

「なんだい、望美?顔、本当に赤いじゃん。熱でもあるのかい?」

「そんなこと……ない、よ」

「へぇ。しばしご無礼をお許しいただけますかな、神子姫様」


そういうなり、綺麗で細い手が伸びてきた。

秋風が庭の木々を揺らす中、ゆっくりと、あたしのほっぺたに触れる。

ヒノエ君の手は冷たい。

自分でも頬が熱くなっているのがわかるから、その冷たさが心地よかった。


「本当に熱いね。お前の頬は」

「そ、そうかな?全然平気だけどな」

「……望美、強がるお前も俺は好きだけれどね。
 でも、俺の腕に甘えてくれる花のほうが、ずっと好きだよ?」

「また……そういうことを言う」


ヒノエ君はあたしの頬から手を離そうとしない。

じっと近づいた顔の位置もそのまま。

あたしはどうしたいいのかわからなくなって、顔を伏せた。

額の辺りに視線が集まるのがわかる。


そして―――


ちゅ、と音を立てたのはその刹那。

唇の柔らかさよりも、その熱に驚いた。


「ヒノエ君!?」

「象牙のような艶やかな肌に誘われてね。
 姫君の額に触れた罪は重いかな?」


いつも通りの、いたずらを成功させた子供のような顔でウィンクする。

できれば、薄紅の唇をお許しいただきたいけれどね。と。


「それはできない、かな?」

「どうしてだい?俺じゃあだめ?」

「だぁめ」


あぁ、この人のことが好きだ。

駄目といった瞬間の、瞳に揺らいだ動揺に、虚を突かれた顔。

初めて見た。

普段なら余裕たっぷりで、自信満々に行動してあたしを驚かせてくれるヒノエ君ももちろん好きだけれど。

こんなヒノエ君も、好き。


「どうしてだめなんだい、望美?」

「それは内緒」


なんだか笑えてきた。

こうして、ヒノエ君のいろんな顔を知っていけるのが、たまらなく嬉しい。

笑うあたしを、不思議そうに眺めた後で、ヒノエ君もにやりと笑った。


「じゃ、他のヤツに奪われないよう、予約しとくかな?」

「予約?」

「そう……今は、これだけ、ね。姫君?」


そういって、彼は、ゆっくりと額にキスをくれた。


あなたとキスを。

いつか、どこかの空の下で。

想いが伝わるキスを。

何度でも。














☆☆☆☆☆☆☆あとがき
あれです、ほら、シリアスしか書けないのに無理やり甘いやつ書こうとすればこうなるんだよって
いう、いい教訓になりました。
物陰から見てるのはもちろんゆずるん。血の大雨警報発令5秒前

いっつもえちゃでお世話になってるアサキちゃんがですね、挿絵を描いてくれましたですよ奥さん!
ムッハー(謎
のんちゃんもヒノもかわいいよう!幸せでございます☆



Special Thanks to アサキ様「waterfall